パチスロ ベヨネッタ フリーズ

パチスロ ベヨネッタ フリーズ

時間は過ぎて金曜日の夜中、すでに雪奈は実習へと向かっており、屋上で剣を振っているのは静希とオルビアのみであったオルビアは実体を作って雪奈の持っている西洋剣を振るい、静希はオルビアの本体を振って剣の稽古をしているオルビアの剣を受け続け、時折生まれる隙を見逃さずに反撃するもちろん歴戦の騎士であるオルビアにあたるような攻撃はできないが、着実に防御に関しては上達しているのがわかる自らの左腕についている義手もだいぶ馴染んできたのか、未だ誤差はあるもののそこは体を上手く動かすことで補っているようだった「ふむ・・・もう私の実力ではマスターの防御は崩せなくなってきましたね」「オルビアのお墨付きか、嬉しいけど・・・雪姉の攻撃を防ぎ切れないことにはなぁ・・・」オルビアの実力は決して低くない、事実雪奈との戦いにおいて一撃もその体に浴びることなく終えた唯一の人物である専守防衛に努めていたとはいえ、あの雪奈の剣撃を受け切って見せたのだ、オルビアは攻撃よりも防御に長けた人物なのだろうそして目の前のオルビアこそ静希の目標とする剣術の完成形だ能力を介することなく磨き上げられた確固たる実力鍛錬のみで能力を使う雪奈に拮抗して見せるその姿それこそ静希が目指すものであるオルビアの剣技は雪奈の鋭く速いそれとは違い、体捌きに重きを置いたものだ立ち回りと言えばいいのか、剣単体だけではなく、全身を使っての攻撃が多い叩き付けるように剣を振るうこともあれば、防御する際も体を動かしながら受け流したり受け止めたりすることが多い自らが扱っていた剣の特性をよく理解した動きなのだろう、剣は小手先で動かせるほど軽くない、だからこそ戦いの中で全身を使った技術を身に着けたというべきだろうだが静希にとってそれは見本とはならないなにせ静希が使う剣、オルビアには重さがない自分なりの技術を確立しなくてはならないのだから、攻撃を受け続けて自分で作り上げていくしかない気の長い作業ではあるが、少なくとも不可能ではない目の前のオルビアがその確信を強くする「雪奈様は今頃どうなさっているでしょうか?」「ん・・・まぁ住み着いた動物の駆除はもう終わってるだろうな、二日目からは本格的に家具排除に勤しむんじゃないか?」雪奈たちの実力から言って、仮に奇形種だろうと瞬殺できるだろう完全奇形が現れた場合、少し苦戦するかもしれないが、その場合はうまいこと連携して切り抜けられるだろうなにせ雪奈たちは自分たちよりも多くの戦闘経験がある屋内に住み着く動物程度を排除できないというイメージはどうしてもできなかった「雪奈様のあの剣技、私も習得できればもっとマスターの助けとなるのですが・・・」「あれを真似しようってのは無理だ、あれは能力の産物、一生剣に向き合ってないと到達できないようなものなんだから」剣を振るいながら、剣を防ぎながら静希とオルビアは鍛錬を続ける屋上に響く金属音、そして十月も半ばに移ることで冷えてきた風が二人の体をなぞる中、オルビアは一歩踏み込んで静希の持つ剣を切り上げる重さがないことが災いし、簡単に剣は上へと持ち上げられ一瞬静希の体が無防備になる振り上げた剣の勢いを殺さずに一回転してその手に持った剣を静希の腹部に叩き付けようとするだが静希もそのままやられるつもりはないオルビアの剣を持つ腕に蹴りを入れ、その動きを一瞬止めるとかち上げられた剣をそのまま振り下ろして攻撃する以前静希が雪奈にやられたのと同じだ、剣だけでなく足まで使う防御攻撃が当たると思った瞬間、オルビアの体が半歩横へと移動する剣の切っ先がオルビアの髪に触れるが、その体までは届かない中途半端な体勢で剣を振ったせいで、静希の体勢は完全に崩れてしまっている、そこを見逃すほどオルビアは甘くなかった避けながら自分の足をいつの間にか掴んでいたのか、オルビアは静希の足を引っ張るように地面に転がしてその首筋に剣を添える「攻勢に回るとお粗末になりますね、今の場面であれば腕の動きを止めた後切り払いながら後退するべきです、正しい姿勢で攻撃しなければ与えられる威力も期待できません」「あはは・・・さすがに簡単にはいかないな・・・」雪奈の真似をしようにもこんなに簡単に返されてしまう、まだまだ静希は未熟者らしい以前雪奈とオルビアの戦いにおいて、実力を数字に例えた際に雪奈を十、オルビアを八としたが、今の静希の実力は恐らく四、よくて五あるかないかだろう専守防衛の体勢をとっていても攻撃を防ぎきれないのだからだが、最初は一もなかった実力をここまで伸ばせたのだ、先は長くとも、未だ到達点が見えないというわけではない「ですが、これほどの時間鍛錬を行ってようやくの死亡一回目です、マスターの実力は確かに上がっていますよ」「そりゃ嬉しいね、あとはもっと腕の動きが早くできればいいんだけどな」未だ腕の誤差はコンマ数秒存在する至近距離での戦闘に置いてその一瞬にも等しい時間は致命的だオルビアとの稽古では、体を上手く使えば何とかなるが雪奈との稽古では完全に間に合わないほどの隙となる左腕を完全に扱うには、まだ時間が足りない、だが少しずつ、本当に少しずつではあるがその腕は静希になじんできていた土曜日、静希と明利がいつものように射撃訓練に勤しんでいる中、珍しくその場には町崎の姿があったどうやら仕事でここに来る用事があったようで、静希と明利の射撃を眺めていたなんでも、先日大野と小岩が世話になったから指導してやろうとのことらしい二人が的めがけて弾丸を放つさまを逐一観察しながら、少しずつ二人の射撃の体勢や構えを修正していく静止状態での射撃の構えは基本中の基本だ今まで動きながら射撃することの多かった静希は微妙に基本ができていないのかよく修正を受けていた一方明利はもとよりまじめな性格のため構えなども十分できていたのか、町崎がいるということも全く関係ないというかのように集中を高め、遠くにある的めがけて狙撃用の銃を用いて穴をあける静希は拳銃を使っての中距離射撃、明利は狙撃銃を使っての遠距離狙撃を行い続けている夏から始まったこの射撃訓練だが、こうしてしっかりと狙いをつけられる場所での技術はかなり高くなってきただが実際に動くとなるとこうはいかないだろう以前鳥海の部隊で訓練した静希はよくわかっているが、動く相手に対して当てるのと、止まったままの的に対して当てるのとでは難易度が桁違いなのだだからこそ、複数表示される的を一つ一つ変えながら撃っているのだが、それでもやはり動いている物を打つ練習にはならないそしてこの射撃訓練で一番変わったことがあるとすれば、やはり静希の左腕だこの左腕は静希の思ったとおりに動くために、角度などの情報をミリ単位で調整することができる所謂精密射撃が可能なのだ今までは銃についているアイアンサイトを用いての調整しかできなかったのだが、今こうして自分の腕を思いのままに動かせるようになると如何に射撃を上手くできるかがわかる手振れもなく、力を込めたことによる揺れもない銃を扱うのにこれほど適した左腕もないだろうとはいっても、扱うのが静希自身である以上まだ誤差はある剣術も射撃も、静希の左腕の扱いにかかっていると言っても過言ではないだろう「もしもし・・・あぁ・・・いる・・・いや幹原君も一緒だ・・・わかった・・・二人とも、城島が呼んでいるらしいぞ」町崎からの言葉に静希と明利はいったん射撃をやめて振り向く一体何の用だろうと自分たちの携帯を見てみると着信が何件か来ていた「呼んでるって・・・今日休みだぞ・・・またあの人休みに働いてんのか?」「今日は二年生の人たちの校外実習やってるし、それで学校にいたんじゃないかな?」さすがに学校を空にしておけないのか、それともただ単に仕事が溜まっていたのか、城島からのラブコールに応対するべく静希は携帯で城島に電話をかける「もしもし五十嵐です、城島先生ですか?」『ようやく繋がったかバカ者、緊急事態だ、今すぐ制服に着替えて学校に来い』静希は嫌な予感が止まらなくなるこのパターンは夏休みにも一度あったあの時はいきなり悪魔の事件にかかわることになったために訓練中に城島から連絡が入るということ自体よい予感がしない「あの・・・とりあえず何があったかくらい教えて・・・」そんなことを話していると今度は別の誰かから着信が入るどうやら熊田からのようだった「あ・・・先生すいません、熊田先輩から電話が・・・」『あぁ・・・そうか、丁度いい、詳しい説明は熊田から聞け、とにかく幹原もつれて急いで学校に来い、いいな!?』城島はそのまま通話を切ってしまい、静希は不思議そうな顔をしている明利に視線を合わせて小首を傾げたそして熊田からの電話に出るべく携帯を操作する「はいもしもし、五十嵐ですけど」『五十嵐か!?今時間は大丈夫か?』「はい・・・えっと城島先生から熊田先輩に事情を聞けとか言われたんですけど・・・」一体何が起こっているのか全く分かっていないために、考えることもできないのだが、電話の向こう側の城島の声や熊田の声がやたらと焦っているように聞こえて嫌な予感を加速させるそして事情を聞けと言うだけで熊田はこちらの状況を理解したのか、一つため息をついた後で落ち着いて聞いてくれと釘を刺した上で通話を続ける『深山から聞いていたかもしれないが、今日二年の校外実習があって、ある屋敷に来ていたんだ、そしてこの屋敷に巣を作っていた生き物も無事駆除できた』「まぁ、雪姉とかがいる時点で楽勝でしょうね・・・それで何かあったんですか?・・・ひょっとして雪姉になんかありましたか?」雪奈ではなく熊田から電話がかかってきたという時点で、静希はなんとなくの予想がついていたそしてその予想は的中しているようで、向こう側から熊田の申し訳なさそうな声が聞こえてくるあの雪奈に何があったのか、少なくとも怪我などの類ではないだろう、それならこれ程の焦りは起こさない、彼女はあくまで前衛、怪我をすることなど日常茶飯事だだがこの焦りは怪我などと言うレベルのそれとは違う『実は・・・説明がうまくできないのだが・・・ある部屋を探していたら、深山が・・・消えたんだ』日曜日なので二回分投稿今週から少し私的に忙しくなるので誤字チェックが怪しくなるかもしれません手を抜くつもりはありませんが、どうかご容赦くださいこれからもお楽しみいただければ幸いです

「・・・は・・・?消えた?」熊田の言葉がいったいどういう意味を含んでいるものかが理解できずに静希は眉をひそめる「えっと・・・勝手にいなくなったってことですか?サボってどっかに行ってるとか?」『いや・・・目の前で消えたんだ・・・いったい何が起こったのかこちらでも正確に把握できていないんだが・・・』てっきり雪奈が掃除が面倒でどこかで勝手に休んでいるから叱ってほしいとかそういう電話だと思ったのだが、まったく違うようだった目の前で人が消える転移系統などの能力であるならそれほど不思議はないが、雪奈の能力は付与だ、どんなに身体能力を強化してもその場から瞬間移動ができるようにはならないだろうとなると、雪奈は外的要因からその場から姿を消したと考えるべきだろう「あの・・・それでなんで俺に電話を?」『あぁ・・・実は深山がいなくなった場所に、奇妙なものがあってな・・・触ることができない水の入った盃なんだが・・・』触ることができないその言葉を聞いて静希は状況をほぼ正確に把握した「・・・霊装・・・ってことですか」『・・・その可能性が高い・・・先生に報告したら学校の方から人員を派遣すると・・・一応お前にも伝えておこうと思ったのだが・・・』おそらく熊田自身も分かっている派遣される人員は十中八九静希だこの学校で霊装を所持しているのは今のところ静希のみ、そんな状況で霊装が原因で発生した事件となれば呼ばれるのは必然だ『それと、一つ気になることがあってな・・・』「気になること?」『あぁ、お前に連絡した理由の一つでもあるんだが・・・水面にお前の顔が映っているんだ』熊田の言葉に静希に不信感が募っていく水面に静希の顔が映る一体なぜそんな現象が起こっているのか、おそらく熊田自身も理解できていないだろうだが、静希が向かわなくてはいけない理由がまた一つ増えてしまったことになる「・・・わかりました・・・今から学校に行って・・・たぶん先生と一緒にそっちに行くことになると思います・・・うちの姉がご迷惑かけてすいません」『いや、こちらの不手際だ、お前が気にするようなことはない・・・とにかくそういう事だ、できる限り早く頼む』了解ですと言って電話を切ると、静希はすぐさま銃を片付け始める「先生と熊田先輩なんだって?」「雪姉が面倒事に巻き込まれた、俺が行かなきゃいけないっぽいな、お前もすぐ準備してくれ、たぶん班で動くことになると思うから」「わ、わかった」状況が理解できていない明利もすぐさま準備を進め、町崎に別れを告げた後でそれぞれ家に戻り制服に着替えて学校へと向かう職員室にたどり着くとそこにはすでに鏡花と陽太の姿があった今日もいつものように能力の訓練を行っていたようで、すでに状況は把握しているようだった「二人とも遅いわよ、一大事だってのに」「悪い、射撃訓練してたから・・・で、先生、俺らはどうすれば・・・?」駆け足でここまで来たために若干息が荒くなっている物の、目の前にいる城島に目を向けると、彼女はメールを打ちながらこちらに向き直る「これから深山達の向かった屋敷にお前たち一班を私が連れていく、村端に意見を聞いたんだが、今のところ有力な情報はなし、恐らく未発見の霊装だろう・・・ひいては、五十嵐、お前が対処するのが最適であると判断した、委員会から正式に通告が来たらすぐにでも」セリフの途中で備え付けの電話がコール音を鳴らす、それとほぼ同時に城島は受話器を取ると何度か返事をした後で書類に幾つかの項目を書き記していくどうやら委員会からの連絡がきたようだった事件が発覚したのがいつ頃なのかはわからないが随分と早い対応だ「確認が取れた、今すぐに行くぞ」城島の牽引に静希達は駆け足でその後についていく一体雪奈に何があったのかもほとんどわからないどんな霊装なのかもわからない状況、できるのならそういった訳の分からない状況には関わりたくないのだが、その中心にいるのが自分の姉貴分とあっては避けては通れないだろう「目の前から・・・ねぇ・・・静希みたいな収納系の力の入った霊装?それとも転移かな?」「わかんないな・・・ただ、熊田先輩の情報だと水面に俺の顔が映ったらしい・・・雪姉が俺を呼んでるのかそれともその霊装が俺に用があるのか・・・」電車で移動している最中、静希の心中は穏やかではなかったなにせ自分の一番長い付き合いである姉が危機に瀕しているのだもしこの面倒事に誰かが関与していた場合、静希の怒りは一時的に最高潮なものになるだろう自分の身内に手を出したことを、骨の髄まで後悔させるべく、残虐の限りを尽くすだろう相手が物である以上、この怒りをぶつける対象がいないのがもどかしい限りである「先生、村端さんは本当に何の情報も持ってなかったんですか?」静希のであった霊装専門の売買人、城島の友人でもある村端なら何らかの情報を持っていてもおかしくないと思ったのだ「・・・先も言ったが情報は無しだ・・・場所と姿は見えたらしいが、その形からどの霊装であるか判別できないらしい、少なくとも、今まで国や個人に管理された霊装ではないことは確かだ」霊装などの特別な道具は発見と同時に国に管理される発見された国によって登録管理され、売買などによってその所有権が個人に移ることはあれどその詳細や外見などは必ず記録に残る村端は霊装を専門に扱っている人間だ情報の記されている霊装のことに関しては誰よりも詳しいはず、その彼女が知らないということは本当に未発見の霊装だったのだろうそうなってくるといったいどのような効果が込められているのか全くの未知数だその場から消えたという証言から考えられる能力の候補は収納、転移、同調、発現のどれかであることがわかる収納であるならどこかの異空間に、転移であるならこの世界のどこかに、同調か発現であるなら消えたように見えているだけでそこにいるのかもしれない「ていうかさ、霊装って使用者しか触れないんでしょ?なのに何で能力が発動したのかしら」「もしかしたら雪姉が使用者って可能性もあるかもしれないけど・・・ついてみないことには何とも言えないな、大体雪姉が使い手になるんだったら時間をかけてでも自分の意志で戻れるはずだろ」霊装は限られた人間にしか触れないし使えない静希のようにその限定を解除できるような人間もいるが、今回の対象は純粋な霊装だ、雪奈に何らかの能力が発動したということは少なくとも雪奈が無意識のうちに能力を発動させたか、または第三者の介入があったかのどちらかであるもし雪奈が誤って発動させたのなら、自分たちに心配をかけたということを前面に押し出して説教、もし第三者が雪奈に能力を発動したのであれば地獄を見せる静希の頭の中ではいくつかのパターンがすでに生まれている頭の中でどのような行動をとっているのか、近くにいる鏡花たちには理解できなかったがろくなことではないだろうということはわかっていた乗り継ぎなどを駆使して電車で合計一時間ほど移動し、バスを使って近くまで移動してから歩くこと数十分、目的地である屋敷にたどり着く大きな鉄の門に広い庭、そして庭にはいくつかの家具が放置されている恐らくは雪奈たちが外に運び出した分だろう門をくぐって中に入ると屋敷の方から教師と一人の男子生徒が走ってやってくる、雪奈の班の熊田だった「来てくれたか、助かった・・・というべきか・・・」熊田は静希達の元へ、教師は城島のもとにそれぞれ大まかな事情を説明するためにやってくる「うちのバカ姉がご迷惑おかけしまして、それで件の杯はどこに?」「こっちだ、今うちの班員が見張っている」熊田に引き連れられて屋敷の中に入ると、それはもう酷い有り様だった装飾やカーペット、壁や扉、何もかもが劣化していて少し衝撃を与えようものなら壊れそうだったエントランスから伸びる二つの階段、一つは老朽化のせいか完全に壊れている、もう一つも手すり部分が破損していたりと良い状態とは言えない一体どこの誰がここを使っていたのか、そしてなぜ今になってこんな場所の清掃を依頼したのか、不思議でならない「お、来たか」「待ってたよ、って言っても困るかもだけど・・・」恐らくは雪奈の消えた現場だろう一室に通された静希達を待っていたのは雪奈の班員藤岡と井谷だった全員でお疲れ様ですと挨拶をした後で二人の近くにある金色の盃に目を向ける「・・・これですか・・・」静希が少し遠くから杯を確認する金色に輝く装飾豊かな盃、その中には水らしき液体が注がれているそして熊田の言っていたようにその水面には静希の顔が浮かんでいるはたから見ればホラーにも近い光景だ「それと五十嵐、追加情報があるんだ・・・我々で何度かこれに接触を試みたんだ」「接触って・・・よくそんな危ない真似しましたね・・・」「・・・まぁこちらにも非があるからな、少しでも情報収集しておこうと思ってな」未確認の物体に対して接触を試みるとはなかなかに度胸があるもしこれで誰もいなくなったなんてことになったらそれこそ目も当てられなかっただろうにだが雪奈を除く全員がこの場にいるということは少なくともそのような状況にはならなかったということだろう「結果から言うと、俺ら一度全員、順番にこれの中に入ったんだよ」「・・・え?反応したんですか?」「そうなの、この水面をのぞき込むと能力が発動するらしくて、どこかに飛ばされるんだけど・・・私たちは少ししたら勝手に出されちゃったの」藤岡と井谷の言葉に静希達は目を合わせるどういうことなのだろうかと、状況を正しく把握できないのだ誤字報告が五件溜まったので二回分投稿自分のせいでもあるんだけど誤字のせいでやたらと物語が加速しているいかんねこれはこれからもお楽しみいただければ幸いです

能力が勝手に発動する確かに今まで静希が手に入れたものの中でそういった霊装は確かに存在する静希の左腕にあるヌァダの片腕、これは使用者の体に外的異常が発生したときに自動治癒する能力を保持しているそれと似たようなものなのだろうが、今回のこの杯は微妙に違うように思える藤岡達の話を聞く限りこの霊装が保持している能力は間違いなく収納系統だろう雪奈と同じように杯の能力でとらわれるのであれば、雪奈と同じように出てこれないか、その場からいなくなったままになるはずなのに三人は何の問題もなくここにいるということは何かしらの条件によってとらえる人間を変えている、または選んでいるということだろう「この霊装の能力で飛ばされたとき、どんなところにいましたか?」「えっと・・・そうだな・・・真っ暗な空間で・・・目の前に俺がいたんだ」「・・・俺って・・・藤岡先輩が?」藤岡は頷いて僅かに表情を曇らせた「私の時も同じ、真っ暗な空間で、目の前に私がいたの」井谷の発言に熊田の方を向くと、どうやら熊田も同じだったようだ真っ暗な空間の中で眼前にそびえる自分自身一体どういう事だろうか、コピーでもしているのだろうか「それだけじゃない・・・なんかこう・・・今の俺らより少し幼かった、そんでなんか・・・いくつか思い出話っていうか・・・その・・・いろいろ話してきたな」「・・・なんかよくわかりませんよその説明・・・」鏡花の言葉に藤岡は申し訳なさそうに首を垂れる自分でも要領を得ない説明だということは理解しているのだろう、熊田や井谷も同じ様子で、それ以上の説明はできなさそうだった「収納された先に雪姉はいましたか?」「いや、見当たらなかった・・・いたのは昔の自分だけだな」熊田の言葉に静希達は思考を開始する少なくともただ誰かを入れるという能力ではなさそうだった同じ収納系統である静希は考えをまとめ始める「とりあえず、この霊装の情報をまとめるか」「そうね・・・能力自動発動で、水面を覗くと発動、能力の系統は収納、異空間に物体・・・というか生物を収納できる・・・その先に何があるかは若干不明」「でも、雪奈さんは出てこれなくて先輩たちが出てこれてるってことは、何かしらの条件があるってことかな・・・」「内側に鍵のついてるタイプか、鍵の設定ができるタイプか、どっちかってこったろ?」陽太の言った鍵という例え静希の持つ歪む切り札は収納する時に静希本人の入れるという意志が必要となるだがそのカギは外側からのみであり、内側からはかけられていない、だから人外たちは自由に出てこれるというわけである相手が無機物で意志を持たないのであれば出ようとすることがそもそもないために入れたままにできるが、意志を持つものは出ようと思えばいつでも出れる静希の能力はそういう能力だだが目の前にある杯は恐らく逆、入ることに関して鍵は必要ないが、出るためには特定の条件が必要となるタイプであると静希達は仮定したのだ「でもさ、なら何で水面に静希の顔が浮かんでるのかしら、これも能力の一つ?」「さぁな・・・入った人間の心の中でも映してるのか・・・それともこの中に別の誰かがいるのか」別の誰か、静希の言葉に全員に緊張が走る「先輩、先輩方がこの中に入った時水面に変化はありましたか?」「いや変わらず五十嵐の顔が映されていたが・・・」少なくとも雪奈の心が影響して静希が水面に映っているわけではないようだ「一回入ってみないことにはわからないかなぁ・・・」「あの・・・さっき先輩たちが言ってた子供の頃の自分ってことは・・・たぶん中に入ったら同調が働くと思う・・・記憶とか、そういうのを読み取られるんじゃないかな・・・」同調系統として、この杯に含まれている能力をもう一つ仮定する明利に静希達は唸ってしまうこのまま何もしないままでは雪奈は取り戻せないだろうかといって未知の危険の中に飛び込むほど静希は無謀ではない「ねぇ、静希の力でこの霊装をつかえるようにすれば何とかなるんじゃないの?」静希にしか聞こえないように小さな声で鏡花が耳打ちすると、当の本人は微妙に眉をひそめてしまう「それも考えたんだけどさ・・・城島先生だけじゃなくて他の先生もいるだろ?俺の能力で霊装の限定が解除されるってばれたくないんだよ・・・」城島はすでに悪魔や神格と言った面倒事をここぞとばかりに抱え込んでくれているだからこそ信頼に値するが、ほかの教員は一体どうなるかわかったものではないもし委員会などの人間にばらされた場合、日本の管理下にある霊装をすべて限定解除させられかねないのだ、それは静希としても避けたい「だったらさ、静希以外の三人が入ってみる?静希が入るのは最終手段で、ほかの三人で雪奈さんを捜索する」「・・・あんまりやりたくないけど・・・そうするしかないか・・・」一番やりたくない方法ではあるが、それ以外に手がない虎穴に入らずんば虎子を得ず、何事もやってみなくてはどうしようもないこのまま何もしなくても時間ばかり過ぎるだけなのだから

「じゃあ誰が最初に行くか・・・最初はグー!」静希を除いた三人が同時に拳を振り上げてじゃんけんを始めるあらかじめ打ち合わせでもしていたのではないかと思えるほどのタイミングに先輩一同は苦笑するしかなかった「じゃ、じゃあ最初は・・・私が行くよ」じゃんけんに負けた明利は渋々ながら水面を見るそこには相変わらず静希の顔があり、少し照れながら背を伸ばして水面を正面から覗き込んだ瞬間、明利の視界に収まっていた光景が変化するそこは暗闇だった熊田たちの言うように何もない、真っ暗な何も見えない空間辺りを見回しても雪奈の姿は見えない、別の空間を作って隔離しているのか、それとも広すぎる空間のせいで見えていないだけかとにかくまずは雪奈を探すことにする「雪奈さん!どこですか!?」できる限り大きな声をあげるものの、反響すらしない空間に明利は途方に暮れていたこの場にいても何ができるわけでもなし、明利はとにかく歩くことにしたどちらの方角が正しいなどと言うことはわからないが歩くしかない、もし熊田たちのいう事が正しければ少ししたら自分はこの場から出されてしまうのだ、ならばできる限りの情報を持ち帰らなくてはならない「雪奈さん!どこですか!?聞こえてたら返事してください!」何もない空間にめがけて声を投げかけるも、返事はなく静寂のみが返ってくる何もない空間でただ歩くというのもなかなか精神的に苦痛を受けるが、ここに閉じ込められている雪奈のためにも泣き言は言っていられなかった明利が歩いていると、どこからか笑い声が聞こえるどこかで聞いたことのある声、だがどこか違和感のある声どこからか聞こえる笑い声に明利が周囲を見渡すと、それは明利の目の前に姿を現した明利の前にいたのは、現身のようにそこに立っている明利自身だった熊田たちの言っていた、目の前にいた幼いころの自分何時頃の自分かはわからないと言っていたが、目の前の明利は今の明利と髪の長さ以外寸分違わず同じに見えたそれだけ自分が成長していないのだという事実を突き付けられ若干のショックを受けながら明利は自分の体の感覚を再度確認する同調を受けた感覚はなかった、だが今こうして目の前に過去の明利がいるいつの間にか同調を許し、もしかしたら今も記憶を読まれているのかもしれないそう思って自分の体を徹底的に調査しているのだ『何をしているのワタシ、そんなことしたって意味ないのに』目の前にいる自分が唐突に声を出すいや、声を出すというのは正しくない、頭の中に直接響くような一種の不快感を催す耳鳴りにも似た現象だった相手がこちらに言葉を向けてきたのであれば話すことができるということでもある、ここは明利も言葉を返すことにした「意味がないかどうかは私が決めるよ・・・私は私にできることを」『できること?ワタシに何ができるっていうの?なによりもワタシ自身を信じてないワタシが』自分のことをワタシと言う目の前の過去の明利に、僅かに違和感を覚えながら明利は眼前の存在を注視する身長は同じ、体格もほとんど、というか全く同じ、顔つきも、スタイルも、手も足も全く同じ唯一の違いは高校に入ってから伸ばし始めた髪のみだ目の前の存在は一体なんだろうか、熊田たちもその存在を把握できていない以上、自分にそれがわかるとも思えない「あなたは・・・だれ?」『その質問に意味はないよ?私はワタシだもん、そうでしょ?』目の前の自分と話していると私という単語がゲシュタルト崩壊しそうになってくるどっちの私が自分のことを指しているのかわからなくて意味が分からなくなってくる「雪奈さんはどこ?あなたは知ってるの?」『ワタシが知らないことを私が知ってるわけないでしょ?私はワタシなんだから』目の前の明利では情報源になりそうにないことを悟ると、明利は視線をずらして目の前の明利のわきを見る黒い空間にわずかなひずみがあるように見える、目の前にいる存在はどうやら何かの向こう側にいるようにも見えた鏡か、水面か、どちらにしろ眼前に見えているだけで存在しているというわけではないかもしれない「なら探さなきゃ、雪奈さんが待ってるかもしれないし」『必要ないよ、ワタシは誰からも必要とされないもの』その言葉に、明利は歩みを止める自分の声で放たれるその言葉に、意識せずに足を止めてしまっていた『可哀想なワタシ、小さくて可愛いワタシ、何にもできない、肝心な時に役立たずなワタシ・・・静希君を助けてあげられなかったワタシ・・・そんなワタシを、一体誰が必要とするの?』「・・・何を言ってるの・・・?」明利はわずかに首を動かして自分を見たそこにいるのは、本当に自分の姿を生き写しにしたかのような明利自身だがその顔が浮かべる笑みは、普段明利が浮かべるものとは全く別の、歪んだものだった

『静希君との約束も守れなくて、いつもみんなの足を引っ張って迷惑かけてる、そんなワタシに、いる意味ってあるの?』「・・・」目の前の自分の言葉に明利は言葉を返さなかったそれは明利がいつも抱えていたコンプレックスだ自分は静希のように、困難な現状を打開できるだけの頭脳があるわけでもない陽太のように屈強な体と能力があるわけでもない鏡花のように生まれ持った天性の才能と美貌があるわけでもない明利は自分がひどく中途半端だと思っていた索敵だって無駄に手間と時間がかかる、治癒だって応急処置レベル、かといって足が速いわけでも、自分自身で戦えるわけでも、頭が一際いいというわけでもない自分は誰よりも劣っている、明利自身がずっと思い続けている事実だった『静希君に告白して、返事を待つ前に唇奪って、晴れて恋人同士になれて・・・でもそれって本当に静希君の本心なの?同情で仕方なく付き合ってくれてるだけじゃないの?』これも明利がひそかに抱える想いだった静希は優しい誰からなんと言われようと、明利は、静希は誰よりも優しいと思っていただからこそ、自分を傷つけないように仕方なく一緒に居てくれるだけかもしれない否定できないからこそ、不安ばかり募っていた『陽太君だって、鏡花ちゃんだって、もしかしたらワタシのことうざいって思ってるかもしれないよ?どっかいって欲しいって、いらないって思ってるかもよ?』「・・・」反論を受けないからか、目の前の明利は嘲笑と共に明利に向けて言葉を飛ばし続けるどれもこれも、確かに明利がひそかに抱えているものだった事実だからこそ、明利は何も言わなかった『本当はワタシのことを、みんな嫌いかもしれないよ?そんなワタシが、どこに行って、何をするの?何にもできないのに?』明利の声が、誰でもない明利自身に突き刺さるそして明利は、自分自身と向き合って数センチ前まで近づいた眼前にいる、見間違うことのない自分自身に、明利はわずかに目を細めた「・・・そう・・・あなたは私じゃないんだね」その言葉に、目の前の明利は目を見開いた『・・・何言ってるの?私はワタシだよ?』「違うよ、あなたは私じゃない、もしあなたが本当に私だったら、そんなこと言う意味がないってわかってるはずだもん」明利の言葉に、目の前の明利は何を言っているのかわからないという顔をした眉をひそめて自分自身をにらみつける眼前の明利に、まったく臆することなく明利は言葉を続ける「さっきあなたも言ったよね?私自身を信じてない私が、何ができるのって」それは先程、明利が言われたことだった、そして明利の中での事実だった明利は自分を信じていない情けなくて、自信が無くて、臆病で、だからこそ自分が一番信じられなかっただからこそ日々努力を続けた、誰かの助けとなれるように、力になれるように「私はね、あなたの言う通り私を信じてない・・・私は、静希君たちを信じてるの」明利は自分を信じない、そして自分以上に、静希達を信じている自分を、自分の家族を救ってくれた静希をいつも全力で、まっすぐで、止まることを知らない陽太を綺麗で、頭が良くて、かっこいい鏡花を自分よりも他人を信じるなど、普通ならばありえないだろうだが良くも悪くも、明利は静希達に強く依存している陽太のように、何の根拠も与えずに静希の作戦を信じられるのと同じように、明利も静希のことを全面的に信頼していた「静希君はね、私に言ってくれたんだ、好きだよって、ずっと一緒に居たいって・・・私はそういってくれた静希君を信じてる・・・私の姿の人の言葉なんて信じられないよ」だって、私の言葉ほど信じられない物はないもん最も疑うべき対象が自分自身である明利にとって、自分の言葉ほど疑わしく不確かなものはない、誰でもなく自分自身だからこそ自分の言葉の不安定さを理解しているこれが他人の姿をしていたら、少しでも動揺したかもしれない、だが自分自身の姿をした、自らを自分自身だという誰かの言葉を信じられるほど明利は自信家ではなかった明利の言葉に、眼前の明利ではない何かはわずかに表情を歪ませた後その場からゆっくりと消えてしまったあれは一体なんだったのだろうか、何故自分の姿であんなことを言ったのだろうか自分の言葉で事実を突き付けられたことで、少しだけ不安になり、明利はここから出て静希達に無性に会いたくなったそんなことを考えていると明利の視界が僅かに歪む瞬間、眼前には暗闇はなく、先程まで自分がいた静希達のいる部屋に立っていた「お、戻ってきたか」「明利、大丈夫?変なところない?」「怪我とかはしてなさそうだな、やっぱ害はないのかな?」三人が明利に近寄ると、明利は何も言わずに近くの静希に抱き着いた自分であぁ言っておきながら、内心不安なのだ信じるというのは難しい、いくら言い聞かせても、いくらでも疑いの心が生まれてしまう「おぅ?ど、どうした明利?」「・・・ううん、なんでもない・・・ちょっとこのままでいさせて・・・」顔をうずめたまま上げようとしない明利に、静希は戸惑ってしまう今までこんな明利を見たのは数回しかない何かあったのだろうかどういう状況なのか全くわからずに、部屋に残ったままだった三人は疑問符を浮かべながら静希の体に抱き着いている明利を眺めていた

「つまり、記憶を読むってだけで、本人が出てくるわけじゃないんだな?」「うん、たぶんそうだと思う」静希に抱き着いたおかげで気分が落ち着いたのか、明利はあの空間で起きたことを静希達に伝え、自分の考えを話していた霊装の中で起こったことをほぼ正確に把握した静希はとりあえず内容を整理しながら腕を組んで悩んでしまっていた「中にいたそいつが明利を外に出したのか、それとも無意識で何か外に出る条件を満たしたのか・・・そもそもなんでそいつは現れたのか・・・わかんないことばっかりだな」少なくとも同じような目に遭っていながら出てこれた人間が三人ほどいる五人中に入って四人が出てこれたというのに雪奈だけが出られないのはなぜだろうか「なぁ静希・・・ひょっとしてだけどさ・・・この中になんかいるってことありえねえかな?」「なんかって・・・雪姉以外にってことか?」陽太は頷いて眼前にある霊装を見る「明利の話じゃさ、こいつって記憶を読めるんだろ?だったらその・・・お前の力に頼りたい何かが雪さんを人質にしてるって考えられねえかな?」陽太は言葉を意図的に濁したが、何か、とはつまり人外のことだ人質なるほど、もし仮に霊装が自動発動で誰かを取り込んだ中で、陽太の言う『何か』が偶然取り込まれてしまい、出ることのできない状態にあった場合、人外を収納できる静希ならばこの霊装から一緒に脱出できるかもしれないそのことを偶然ではあるものの雪奈の記憶を読んだ際に知った、そして彼女の記憶を読むうちにその能力を持つ静希が彼女の幼馴染で弟分であることを知り、人質として利用するために拘束、何らかの力を使って静希を呼ぶために水面に静希の顔を浮かび上がらせた「じゃあ、なんで明利の偽物・・・ていうか記憶を読んで嫌なことを言ったりするんだ?」「ん・・・あれじゃねえの?いやなこと言ってどっか行ってもらって、さっさと静希を連れてこようとしてるとか?」中にいるということは少なくとも静希達よりもこの霊装に詳しいと考えていいだろう記憶を読んで、この霊装の外に出る条件を満たさせるために苦言を強いている目的の人物、静希が現れるまで、それを繰り返している筋は通っているように思える「・・・あんたって本当に、たまにだけど頭を使うことがあるのね」「な、なんだよ、そんな褒めても何も出ねえぞ?」褒めてないわよと言いながら鏡花は杯の近くに歩み寄る「じゃあ静希、どうする?次は私の番なんだけど・・・さっさとあんたが行っちゃう?」「ん・・・それでもいいけど・・・正直相手の思うつぼになるのっていい気がしないな・・・利用するのはいいけどされるのは大嫌いだし」陽太の仮説が正しかった場合、静希が中に入るということは相手が望んでいるということでもある恐らくそうすれば雪奈も解放されるかもしれないだが人質を取った相手のいう事を聞くのは静希からしたら非常に癪だ、正直に言えば絶対にいう事など聞きたくない「んじゃ、情報収集含めて私も行ってみるわ、その次は陽太ね」「あいよ、雪さん見つけたら連れ戻しておいてくれよ?」見つけたらねと言い含めて鏡花は明利と同じように杯の水面をのぞき込むすると同じように鏡花の視界が一瞬にして暗転し、何もない暗闇に一人立たされている状態になった話には聞いていたが、実際にやってくると非常に心理的圧迫感が強い「雪奈さん!?いますか!?」とりあえず叫んで雪奈がいないか確かめることにするだが返事はない真っ暗で何も見えない空間、次に鏡花は自分が立っているであろう地面に触れてみる黒い何かに手で触れて同調してからその物質がいったいなんであるかを調べようとするのだが、同調の能力が働かないこの空間では能力が使えないのかと思い自分の服に触れて同調を試みると、何の障害もなく同調、そして変換を行うことができるどうやらこの空間自体に能力を使うことはできないようだ恐らくは鏡花の能力の範囲外の物質、いや、もしかしたら現象そのものなのかもしれない自分が立っていると認識しているだけで、実際は違うのかもしれない理解できないのなら、そういうものだと納得することにして鏡花はその場から歩き出すとにかくせっかくこの場に来たのだ、情報をできる限り集め、その中で雪奈を見つけられるのであれば見つけたい自分だって世話になった先輩なのだ、助けたいと思うのは至極当然である「雪奈さーん!聞こえてますかー?どこですかー?」雪奈の名を叫びながら鏡花は歩く同じ空間にいるのかもわからないが、何もしないよりかは効果的だろうと思いこうしているが、一向に反応はない一体どれくらいそうしただろうか、鏡花の耳に自分の声以外の何かが聞こえてくるその声は、笑い声だったそして、自分以外というのは、正しくないかもしれないその声は、かつての自分、幼いころの自分の声だった鏡花が声の元を探すと、それはすぐに見つかった身長も低く、髪も短い、幼い顔立ちの、恐らく小学生くらいの清水鏡花『あら、何をしているのかしら?意味のないことはやめなさいよワタシ』「・・・出たわね偽物」幼い声で、それでも鏡花の口調そのものである目の前の鏡花明利から聞いていたが、実際に目の前に出てこられると幾分か動揺はある熊田たちの話から昔の自分が出てくるということはわかっていた明利からはほとんど自分と同じだったなどと聞いていたからてっきり中学くらいの自分が出てくるかと思ったのに、まさかここまで前の自分だとは思わなかったのだそう考えると明利は一体いつごろから成長が止まったのか、今度アルバムでも見て確かめなくてはならないなと心に決めた「無駄なことなんてないわよ、呼びかけて反応があるかを待ってるんだから、雪奈さんに聞こえれば返事くらい」『返してくれると思ってるの?』幼い鏡花の言葉に、鏡花は眉をひそめる何を言っているのだろうか、自分が危険な状態にある中で、助けがやってきて反応を返さないわけがない「まさか・・・返事もできないような状況になってるんじゃないでしょうね・・・?」目の前の鏡花をにらむが、幼い自分は飄々としながら笑い続けている何を見当はずれのことを言っているのかそういう、答えを間違えた子供を見るような見下した目と笑みだった『違うわ・・・私なのにずいぶん目をそらすのがうまいのね?』「目をそらす・・・?」幼い自分の言っていることがわからずに、鏡花は徐々にいらだっていた目の前の自分はわかっているようだった、だが自分にはそれが何なのかわからない記憶だけを読んでいる、明利はそういっていた記憶だけでそれ以外は読んでいない、ということは経験だけを抽出して把握しているということだ何故目の前の劣化した自分に理解できて、本物である自分に理解できないのか一体この自分は何を考えているのか、理解できなくていらだっていた『ワタシは随分と察しが悪いのね、本当に私なのかしら?』「・・・何が言いたいの?あんたなんか私じゃないわよ」鏡花の敵意を前に、幼い鏡花はくすくすと笑い続けるその声がさらに鏡花をいらだたせる、昔の自分を馬鹿にされているようで腹が立つ『ワタシは雪奈さんを尊敬してるのね、少し残念だけど、頼りになる先輩、好意的に思えるのも当然よね・・・でも雪奈さんはどう思ってくれてるのかしら?』幼い自分の言葉に、鏡花はわずかに眉をひそめるこの目の前の自分がいったい何を言いたいのか、未だに理解できないのだ「雪奈さんが私をどう思ってるかなんて気にならないわよ、少なくとも嫌われてはいないと思うけど、今はそんなことは」『本当に嫌われてないのかしら?』その言葉に鏡花は身を強張らせた本当は雪奈は自分のことをどう思っているのだろうか頭の片隅で、そう考えてしまったのだ『雪奈さんだけじゃないわ、静希も、明利も、陽太も、本当はワタシのことをどう思ってるのかしら?』「そん・・・なの・・・普通の、友達で・・・」『友達?ワタシが?一人ぼっちの天才の私が?』自分の声でその単語を呟かれた瞬間、鏡花の心臓が跳ね上がる一人ぼっちの天才、それは鏡花が中学時代に言われていたあだ名のようなものである静希の引き出しなどと同じような、不名誉なあだ名『ちょっとワタシがすごいからってみんなワタシから離れていったわよね?親友だと思ってた子も、昔からずっと一緒だった子も、ワタシが優秀になっていったら、みんなワタシを嫌っていったじゃない』鏡花は、昔から優秀な子供だった勉強もできたし、運動もそつなくこなせた子供のころから歯に衣着せない物言いだったし、そういう意味では誰よりも不器用な生き方をしていたともいえるそして転機は中学の頃に訪れた今まで通りに普通に自分の生活をしていたはずなのに、周りの友人たちが自分を避け始めた教師に天才と言われ、成績を上げれば上げるほど、友人たちは自分を妬み、疎外するようになっていった嫉妬子供の頃にはなかった妬みの感情が芽生えたことで、鏡花はその格好の的になってしまったのだ天才だともてはやされ、勘違いした同級生に戦いを挑まれることもあったが、全て撃退できたその事実がさらに周囲の偏見を買ったのだ、鏡花は天才だから自分たちを見下しているのだと鏡花からすればそんなことをしたつもりは一度もないだがその強い言葉遣いと、優秀すぎる能力が、同級生たちの勘違いと妬みを加速させた嫌がらせを受けても、自分の能力を使って反撃することはなかった能力を使って報復すればどうなるかわかっていたからだその反応すらも、自分たちを見下しているのだと思われ、鏡花は二年に上がるころには完全に孤立してしまっていた誤字報告が五件溜まったので二回分投稿二月頭まで忙しい時期が続きますが、頑張っていきたいと思いますこれからもお楽しみいただければ幸いです

再び転機が訪れたのは、高校に上がる少し前に告げられた父の転勤だった公務員として働いている父が、勤務先を変えることとなり、関西から関東へ引っ越すという話が出てきたのだ鏡花には選択肢があった両親についていくこともできたし、鳴哀学園の寮に入るという形で鳴哀学園に残ることだってできた鏡花は、少し迷って転校を決意した本来ならば長い時間を共にした鳴哀学園の方が、校外実習を行うにあたって有利に働くであろうことは明白だっただがこの学校では、自分を妬む人が多すぎる、ならば新しい学校へ向かい、一からやり直せないだろうかと、そう思ったのだ自分の不器用さが招いたことだからこそ、少しでもそれを改善してより良い人間関係を築けないだろうかと、そう思ったのだ結果的に、それは鏡花にとって非常に良い判断だったと言える静希に、陽太に、明利に、ほかにもたくさんの出会いがあったのだからそして鏡花は、意図的に強い能力を使うのを控えていた無論、それが必要とされた場合は全力で能力を使い、班に貢献してきたつもりであるだが、自分の意志で進んで行動することはなかった強い能力を使うことで、また再び拒絶されるのではないかと、そう思ってしまったからでもある『静希も陽太も明利も、みんなワタシに優しいわよね・・・でも、本心はどうなのかしら?』「そ・・・れは・・・」鏡花の耳に、いや頭の中に今まで自分に向けて放たれ続けた怨嗟の声が響いていた『あんたのせいで・・・あんたがいなければ・・・お前なんかいなきゃよかったのに・・・どっか行けよ・・・近寄らないで・・・うざいわよ・・・』頭の中に響くその声をやり過ごそうと、鏡花はうずくまりながら耳を塞ごうとするだが、自分に向けられた声は止まらないどこかからか聞こえてくる声は、鏡花の耳に届き続ける『本当はこう思ってるんじゃない?鏡花なんてうざい・・・うるさい、いなくなってくれって』「ちが・・・あいつらは・・・そんなこと・・・」思ってない、そういいたいのに、そう思いたいのに、否定できない心まで読めるわけではない鏡花は、今まで自分に向けられた静希達の目が、声が、信じられなくなっていた本当はあいつらは自分のことが嫌いなのでは・・・?普段の鏡花の思考回路ならこんなことは思わなかっただろうだが、過去のトラウマともいうべき記憶を呼び起こされ、精神が極端に不安定になってしまっていた過去の級友たちの嫉妬と怨嗟の声が鏡花の耳に届くその声が聞こえれば聞こえるほど鏡花は強く目をつぶり、耳を塞ごうとした『なんなら、今すぐあいつらに聞きに行けばいいじゃない?ワタシのことをどう思ってるのか』「・・・!」鏡花は想像してしまった自分の質問を受けて、顔をゆがませる三人の姿を今まで自分を拒絶してきた友人たちのように、自分に嫌悪の瞳を浮かべる彼らの姿を「い・・・いや・・・だめ・・・!」会えるわけがないこんな状態の自分が、静希達に会えるわけがない今あってしまったら、どうなってしまうかわからない、何を言ってしまうかわからないせめてもう少し、もう少し落ち着いていつも通りの清水鏡花に戻れるまで、心を落ち着けなければ帰れない、帰りたくない、帰れるはずがないうずくまって目を強く瞑り、耳に届く声を必死に掻き消そうと鏡花はうるさいうるさいと呟き続ける自分を天才だと思ってくれている三人に、こんな無様な姿は見せられない、見せたくない『うずくまってても何も変わらない、行動しなきゃ変われない、いつまでそうやっていいとこばっかり見せてるつもりなの?』「うるさい・・・うるさい・・・!」すぐ近くにいる幼い鏡花が正論を言っているのはわかっている記憶だけを読んだ劣化物だとしても、そこにいるのは鏡花だ理路整然とした正論を述べ、いつでも正しいことを言う何もしなければ、何も変わらないうずくまっていても何も変わらない、鏡花にだってそんなことはわかっているだが心が止まってくれない、体の震えが止まらない三人に拒絶されるのではないかと思うだけで怖くてたまらない周りから拒絶された鏡花に、初めて声をかけてくれた明利明利から紹介され、最初衝突したものの、すぐに自分を受け入れてくれた静希馬は合わないけれど、自分のことを愚直に尊敬してくれている陽太この三人の本心を聞くのが怖かった、また拒絶されるのではないかと思えて怖かったいくら強くても、人は一人では生きていけないそれは鏡花も同じだ中学卒業の頃は一人でも平気だと思った、だが今はもう無理だ友人が、仲間ができてしまった、その仲間に拒絶されるのが怖くてたまらなかった「・・・なんか遅くないか・・・?」鏡花が霊装の中に収納されてから数十分、明利の時は十分もしないで出てきたというのに一向に出てくる気配はない霊装の水面にも変わった変化はなく、時間だけが過ぎて行っているように思える「・・・もしかして鏡花も捕まったとか?」「付き合い長い雪姉が捕まるのはまだわかるけど、あいつを捕まえる理由ってあるか?」「・・・じゃあ、霊装自体の鍵に引っかかってるのかな・・・」現段階で入った人間が出られない理由となっている可能性は二つ静希を呼んでいる何者かにとらえられている霊装自体の能力の引っ掛かり出られなくなっている前者の可能性が薄いとなると、恐らく後者であることが考えられるが、となるとどうしたものかと悩んでしまう「明利の時はどうやって出てこれたんだ?」「え?んと・・・あまり覚えてないけど・・・ここから出てみんなに会いたいなって思った」「・・・それだけ?」それだけだよと呟く明利に静希は首をかしげてしまう今までこの霊装に取り込まれた三人もあまり覚えていないようだし、こんな少ない情報量で何を把握しろというのか「仮にだ、誰かに会いたいとか、こっから出たいとかが脱出の鍵だったとして、なんで鏡花は出てこないんだ?出たくなくなるほどこの中って快適なのか?」「ううん、真っ暗だし、嫌なこと言うのもいるし・・・あんまり居たいところじゃなかったよ」「となるとあれか、鏡花姐さんまさかの引きこもりか?向こうの自分と意気投合して不平不満をぶちまけていらっしゃるのかも・・・」普段から迷惑ばかりかけているという自覚がある陽太は気まずそうに頬を掻く鏡花に迷惑をかけているという意味では静希も同じであるためになんともいい難い明利の話では記憶を読んで同一体を作って話をするということだったし、ありえない話ではないだろう待っていてもいいが、このままずっと鏡花が出てくるのを待っているわけにもいかない「仕方ない・・・俺と陽太も入るぞ、陽太は鏡花を連れもどせ、俺は雪姉と大本のところの対応をする」「・・・っていっても、おんなじ空間に入れられるかもわからないんだろ?リスク高くねえか?」「このままただ待ってても鏡花がいなくなるってだけだ、出たくないっていうなら無理やりにでも引きずって来い」こういう時は考えなしに行動できる陽太の方が有効だ、鏡花の言葉など何も聞かずに引きずってこれるならこれに勝るものはないだろうもっとも、それで二人が出ることができるかどうかは別問題だからこそ静希も同時に動くのだもし大本につかまっていると思われる雪奈を何とかできれば、それで問題は解決だ後はゆっくり鏡花をこの霊装から出せばいい何が原因で出てこられないのかもしっかりと実証しての救出が可能なのだ、緊急性を優先すれば雪奈が先なのは明白である「んじゃいくか、同時に行くぞ」「あいよ、んじゃ留守番よろしく」静希と陽太が同時に水面をのぞき込むと二人の視界が揺れ、一瞬で真っ暗な空間へと投げ出された静希が周囲を見渡すとそこには一緒に入った陽太の姿もある「なるほど、とりあえず同一空間に出されたか、一つの入り口に対して複数の空間を作れるってわけでもないのかもな」収納系統にもいくつかパターンがあり、一つの出入り口に対して複数の異空間を作ることができるタイプと、静希の歪む切り札のように一つの入り口、トランプに対して一つの異空間しか作れないタイプがある今回の杯は後者の可能性が高い「で?我らの鏡花姐さんはどこにいらっしゃるんだ?」「さあな、一体どこにいるんだか・・・」静希が辺りを見渡すと暗闇にぽつんと誰かが立っている目を凝らすとそこには、幼いころの静希が立っていた身長も低く、顔だちも体つきも幼い静希はゆっくりと手招きをしている「どうやら俺には道案内がつくらしいな・・・お前はどうする?」「んー・・・考えてもしょうがねえし、適当に探すわ、雪さんの方はよろしく」そういってどこぞへと歩いていく陽太、数秒するとその姿は暗闇に紛れて見えなくなってしまうああいうところは考えなしの陽太の強いところだ、特に何も考えずに勘で動くから悩んだり迷ったりすることが無い「さてと・・・」陽太がいなくなるのを見計らって、静希は幼い自分の方へと歩いていく見れば見るほど、昔の自分の鏡写しのようだった自分が近くによると、幼い静希は薄く笑い、静希に背を向けて歩き出すついて来いということだろうか、やはり何者かの意図があって動いているとみて間違いなさそうだった自らの内にわずかな怒りと殺意を抱えながら、静希は過去の自分の後に続いていた土曜日なので二回分投稿この話は正直書くかどうかすごく悩んだ話です、うまくまとめられているかちょっと心配ですこれからもお楽しみいただければ幸いです

静希と別れた陽太はとりあえずあたりを適当に歩いていた「鏡花ー!女王様ー!お迎えに上がりましたよー!いずこー!」やる気のない呼び声に返事をする者はいない、暗闇の中に溶けていく声をあざ笑うかのようにこの空間には静寂が満ちていた「ったく・・・暗すぎてよく見えねえっての・・・おりゃ!」自分の能力を発動し、その身を炎で包むと一瞬周囲が明るくなった錯覚を受けるが、相変わらず周りは真っ暗、何もない状態では光源があってもなくても変わらないということだろうか「んだよ・・・陰気くさいところだな・・・おーい鏡花!聞こえたら返事しろ!迎えに来たぞ!」陽太は能力を解除してから引き続き鏡花に向けて声をかけながら適当に進んでいくが、返事はなく、静寂と暗黒だけが陽太を迎えていたどれほど歩いただろうか、鏡花を呼びながら歩いていると不意に自分とは別の声がするそれは確かに今の自分とは違う声だ、だがどこか聞いたことのある、懐かしい声そう、自分の近くにいつの間にかあらわれた、昔の自分から発せられた笑い声だった身長も低く、顔だちも幼く、声も高い「出たなパチモン、鏡花はどこだ?」『ははは・・・オレが知らないことを俺が知るわけないだろ?』「なんでだよ、お前ここにいたんだろ、なんか知ってるだろうが」明利の話していた内容などほとんど理解していない陽太からすれば、ここにいたんだから自分よりここのことを知っていて然るべきであるという理屈があるのだが、そんなことはないと言わんばかりに幼い陽太は首を横に振って見せる「なんだよ・・・ったく、んじゃ俺こっち探すからお前向こう探せよ」『・・・誰を探すんだ?』「誰って、鏡花に決まってんだろ、俺が知ってることなら知ってんだろ?鏡花くらいわかるだろ?」あぁわかるよと呟きながら幼い陽太は小さな体を揺らしながら笑っている昔の自分はこんなに態度が悪かっただろうかと思いながら陽太は昔の自分を無視してさっさと歩きだす少しして自分の後をついてきている小さな陽太に気が付いてため息をつく「おい、何でついてきてんだよ、向こう探せって言っただろうが」『何で俺がオレのいう事を聞かなきゃいけないんだよ、オレみたいな無能のいう事なんて誰が聞くかよ』「・・・お前・・・そんなに自分を卑下にしなくてもいいんじゃないか?」陽太からすれば昔の自分の姿をした誰かが自らのことを無能だと言っているように見え、少しだけいたたまれなくなっていた自分が馬鹿にされているということ自体に気づいていない、こういう時に頭が悪いと会話が成り立たない物である「あれだよ、俺もバカだけどさ、結構いいことあるからさ、お前もそんなに投げやりにならないで頑張ろうぜ」『・・・何言ってんだ?俺はオレをバカにしてるんだぞ?』「だからそんな馬鹿にすんなって、そう捨てたもんじゃねえよ?どっかしら取柄はあるもんだって」微妙に会話が成り立っていないために、陽太の眼前にいる幼い陽太は眉間にしわを寄せているバカと会話するべきではない、どちらが馬鹿かわからなくなるから陽太はそれを地で行くような真正のバカだ相手が何を言っているにしても、文面そのままを受け取ることがあるために皮肉が通じないこともあるそして目の前の幼いころの自分が、自分自身を侮辱しているなど毛ほども気づいていないのだ『・・・オレって本当に馬鹿だな、言葉の意味も理解できないのかよ、そんなだから馬鹿だの落ちこぼれだの言われんだよ』「おいおい、随分ひどい扱い受けてんだな・・・まぁまぁ、今はそうかもしれないけどさ、いつか分かってくれる奴がいるって、ちゃんと教えてくれる奴がいればいつの間にか少しはましになってるもんだぜ?」会話が成り立っているようで成り立っていない伝えたい意図を陽太が理解しない、幼い陽太は徐々にいらだちながら、自分よりも背の高い陽太の胸ぐらをつかむ『鏡花がわかってくれるってのか?オレのことなんて何にも理解してないあいつを?いいや、誰だってオレのことなんかわかっちゃくれねえよ!鏡花も!姉貴も!静希も!明利も!雪さんだってオレのことなんざわかっちゃいねえんだ!』「・・・?」目の前の自分が言っていることの意味が分からずに陽太は疑問符を飛ばしてしまう前後の文とのつながりがおかしいことに気づいて、陽太はここでようやくその意味を考え出した『オレはわかったふりをしてるだけだろ?だからわかったふりをされてやってるだけだ、結局オレは一人ぼっちの化物だ、炎で誰もかれも傷つけて、ずっと一人で膝抱えてるのがお似合いだ!鏡花を探す?探して見つけたところで傷つけるだけだろ?なぁ化物』幼い陽太の叫びに、陽太は目を見開いた、その言葉の意味をようやく理解したからである「あぁ・・・!お前俺と口げんかしたかったのか?」すっとんきょうな声で、自分の言いたい本当の意味をはき違えてはいるものの、その本質を上手くとらえている陽太の解釈に、幼い陽太は歯を食いしばるこの世界に入った誰かに対して、記憶を読み取って生まれた同一体に近しい存在は、本体のマイナス部分を刺激し続けた捉えようによっては、それは口喧嘩をしようとしていたと取れなくもない『本当に馬鹿だな・・・オレがそんなだから、いつまでたっても鏡花に迷惑ばっかかけてんだろうが、そんなオレのことを、鏡花はどう思ってるだろうな?』「ん?そりゃバカだと思ってんじゃねえの?鏡花だけじゃなくて静希も明利もそう思ってると思うぞ?」特に否定することもなく、むしろ肯定するように陽太はさも当然のように答えて見せる自分が馬鹿であると自覚している、これほど厄介な人間は存在しなかった『それだけじゃねえよ、いい加減うざいと思ってるかもな、オレみたいな落ちこぼれのバカの相手はさ、もう顔も見たくないって思ってんじゃねえの?』「そりゃうざいだろうけどさ、俺のバカは才能だって、他ならぬあいつが言ったんだ、この才能を前にしたらどんな面倒事も・・・」陽太はそこまで言ってあぁ・・・そうかと呟いた周りを見渡して、ようやく事態を把握した何故鏡花がここから出てこれないのか、いや、出てこないのかそれを理解すると同時に陽太は、幼い自分を無視して即座に歩き出す話の途中なのにもかかわらず唐突に歩き出した陽太に驚きながら、幼い陽太はその進路に先回りする『俺を無視してんじゃねえよ、どこ行こうっていうんだ?』「決まってんだろ?鏡花んとこだよ」まるで自分の行く先に鏡花がいることを確信しているかのように、陽太は自らの歩みを止めない眼前にいる幼い自分など眼中にないとでもいうかのように歩を進める陽太は止まるつもりなど無いようだっただが、幼い陽太からすれば自分を無視されることほど腹立たしいことはないコンプレックスを刺激しているのに、トラウマを刺激したのに、一向に陽太は気にする様子がない奇妙きわまる行動原理、記憶を読んだだけで創り出された幼い陽太からしたらまったく理解できないことだった『あいつのところに行ってどうするんだよ?オレに会いたくないって言われたら?顔も見たくないって言われたら?化物ってののしられるかもしれねえぞ?』「それがどうした、俺はとりあえずあいつを連れもどせばいいんだ、あいつのいう事なんて聞く必要ナッシングなんだよ」静希から出されたオーダーは引きずってでも鏡花をこの空間から連れ出すことだ話を聞くなどと言うことは最初から陽太の目的に含まれていない、だから仮に鏡花から何を言われても問題ないという風だった『ざっけんな!オレに会いたくないって言ってるような奴相手にオレが行って何ができるってんだよ!』幼い陽太は常に陽太の進行方向の先にいたが、やがて止まってしまうそして陽太の体もそこで止められてしまう目の前には壁がある、そこに幼い陽太を映し出しているようで、実際にそこにいるわけではないらしい見せかけというには随分と安っぽいハリボテなのだなと陽太は嘆息する『オレみたいなバカは誰の役にも立てねえんだよ!暴走して!勝手に暴れて!今まで何ができた!?静希を守ることもできなかったオレに!いったい何ができるってんだ!』静希を守ることもできなかった本来前衛として、静希達中衛の盾にならなければいけなかった陽太だが結局、静希は大きく傷ついた、左腕を失い、その体にも心にも大きな傷跡を残す結果となったその事を陽太は覚えている、理解している「だからどうした?」陽太は目の前の壁に手をついて能力を発動するその体は炎に包まれ、鬼の姿へと変貌し、一瞬だけ周囲を明るく照らした「やっちまったもんは仕方ねえだろ、次ミスしないようにすりゃいいんだよ」『それでまた同じことの繰り返しだろ、バカなんだからよ』「おおともよ、でもこの馬鹿は才能なんだ、あいつがそう言ったんだ、絶対そうなんだよ」目の前にある壁に向けて拳を構えながら陽太は大きく息を吸い込む「お前、俺と口げんかしたかったんだろ?化物とかオレの癇に障ることずっと言ってたしな」腕を振り上げて力を込める陽太の声は、それほど抑揚があるわけでもなく、いつも通りの様子だった何も変わったことはないとでもいうかのように「けど悪いな、俺はお前よりずっと毒舌な奴と毎日口げんかしてんだ、あんなんじゃ挑発にもならねえよ」毎日のように訓練をしながら、鏡花は激励とも侮辱ともつかない言葉を陽太にぶつけ続けているそれはすべて正しい内容だからこそ、陽太も聞いているし、反論もする、そんなことを六月から毎日のように続けているのだ、耐性もつくというものである腰を落として眼前の壁めがけて狙いを定める、渾身の力を込めて陽太は拳を振りかぶった「俺と口げんかしたかったらな、うちの毒舌女王様連れてこいボケがぁ!」叩き付けられた拳が目の前の壁にひびを作り、そしてガラスが割れるような音と共に完全に砕け、向こう側へとその拳が吸い込まれていった日曜日なので二回分投稿小説書き始めて一年弱、ようやくまともにブラインドタッチができるようになり始めた、まだミスが多いけどもこれからもお楽しみいただければ幸いです

今まで出会った男性とは違う、貫禄のある大人の色気を放つザーディアスのことをネイは尋ねる

「お知り合いなんですか?」「まあね

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俺達が冒険者になる時に世話になった方だよ」「へえー……」「そうなんだよ、可愛いお嬢さん達

是非、おじさんもこの席に混ぜてほしいな」 ザーディアスは酔い始めてきているネイとヴィに、大人の余裕を見せた柔らかい笑顔で尋ねる

 二人も歳の離れたおじ様に優しくされるのは嬉しいようで、少々顔を紅潮させるが、「黙れ、スケベ野郎」「あり?」 後ろから不機嫌そうな声が放たれる

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「あっ、おかえりデューク」「フン」「――おわっ!?」 自分の席に座るザーディアスを乱暴にどかすと、床に尻もちをつくザーディアスを無視して、どかっと座った